Tears〜硝子細工の天使〜


かほはアパートの前に車を止めた。

よしきの車もある。

部屋には明かりも着いている。


時間は午後10時を過ぎたばかりだ。

まだ起きているに違いない…



かほはにわかに緊張してきた。

さっきまでの意気揚々とした興奮は、陰に隠れてしまったようだった。


足音を忍ばせ玄関の近くまで来ると

玄関脇の小窓が開いていたこともあり、部屋の中から二人の声が聞こえてきた。


何を話しているのかはわからないが

笑いながら会話していることに、ショックは隠せない。


かほはしばらくの間、茫然と玄関に立ちつくしていた。



やっぱり来るんじゃなかったのかも……


急に弱気な心が顔を覗かせた。


だが、ここまで来た以上、黙って引き下がる訳にはいかない…!



かほは意を決して玄関をノックした。





コンコン…



その音が中にいる二人に聞こえたのだろう。

二人の会話が途切れ

外の様子に耳を澄ましているのが感じられる。


かほはもう一度ノックした。


コンコン…



ノックをする音だけが静寂の中に響いた。