「佐藤さん、どうぞ」
かほよりも若いと思われる医師が
自らカルテを手にかほを呼び入れた。
看護師もいない、外に声が漏れないようになっている重厚な扉で区切られた診察室。
そこは普通の病院の診察室とは全く異なった雰囲気で
医師と大きな机を挟んで向き合う形になっていた。
医療器具など一切置いていない。
医師が白衣を来ていなかったら、さながらオフィスの重役の個室のようだった。
だがやはり面と向かうと、よしきの話など恥ずかしくて到底できなかった。
とりあえずかほはただ仕事の不満と職場環境の悪さ
そして体調についてだけを話した。
医師は丁寧に話しを聞いてはくれたが
話したからといって治るものでも、すっきりするわけでも
癒されるわけでもなかった。
薬を処方され、二週間後にまた来るように言われてその日は帰ってきた。