佳奈子は毎週木曜日

娘の里沙にクラシックバレエを習わせていた。

娘ができたら、バレエを習わせるのが、かねてからの夢だった。


今日もレッスンを終えた里沙を迎えに

教室の前にいつもより10分程早く着いた。


お迎えの母親達がチラホラ集まってきている中に里美の顔が見えた。


沙織ちゃんのお母さんと何やら眉をひそめ、沈んだ顔で話をしている。


中学で仲良しだった里美も、偶然娘をこの教室に通わせていた。


里美が佳奈子の姿を見つけ手を振ると

沙織ちゃんのお母さんは

『じゃあね』といったそぶりをして、他の母親達の輪に入って行った。



「なんかあったの?浮かない顔して…」

里美に近づくと、佳奈子は笑顔で話かけた。



「恋わずらい…かな…?」

照れたように里美が言う。

「プッ!恋わずらいって…またぁ〜!」

バシン!と音を立て、佳奈子は里美の肩を笑いながら叩いた。


「痛っ!ホントだってばぁ」

その時、里美に笑顔はなかった。


慌てた佳奈子は

「まぢで?何?!どーゆーこと?!」


興味津々の佳奈子に、里美は落ち込んだ様子で話し始めた。