Tears〜硝子細工の天使〜


「……それで、山下さんがいきなり出掛けたものですから

こちらも準備がしてなくて…

慌てて発信器を頼りに追い掛けました。


ですから、最初の計画から10日ほどブランクができてしまいまして…」


言い訳がましくも聞こえないでもなかった。


ホントにやってくれるんだろうか…?


疑心暗鬼になっているかほに、安部は話し続ける。


「それともう一つですねぇ…

佐藤さんから聞いていたあおいさんが…」

言葉を濁した。


かほは身を乗り出し、目を見開いた。


「……あおいさんが、佐藤さんのおっしゃってたイメージと違っていたんですよ。

ですから、本当にその方があおいさんと特定するにも、少々戸惑いましてね」


言っている意味がわからなかったかほは、安部に尋ねた。


「えっ??それどういうことですか?」


「では、ビデオに収めてありますから…

ご覧になりますか?

お一人の時もあるし、山下さんと出掛けた時のも撮ってあります。」


勿論あおいを見たかった。

しかし二人が一緒のところを見る勇気がかほにはなかった。