次の日、かほはまたあの細長いビルの前に立っていた。

前日に探偵社に連絡を取り、施行してもらう意志を伝えた。



エレベーターが11階で止まりドアが開く…

もうかほに迷いはなかった。




「よく決心なさいましたねぇ…
私どもに安心してお任せ下さい。

必ず佐藤さんのお役に立てると思いますよ」


申し込み用紙に記入しているかほに

相談員の田中は明るい声で言った。



その後、段取りなどの打ち合わせをし

振り込み用紙をもらったかほの気持ちは

もう二人が別れるのが当然のように錯覚し、有頂天になっていた。



真夏の太陽がぎらぎらと照り付けるアスファルトを

ミュールでコツコツと歩くその音は

まるで鼻歌でも歌っているかのように軽やかだった。



なんという、浅はかで

なんという、馬鹿な女なのだろう・・・・・





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