エレベーターのドアが開くと、目の前に
《○○探偵社》
と書かれた扉があった。
扉の前に立ち、かほはゆっくりと深呼吸をした。
コンコン…
ドアをノックすると、中から男の声で
「はい」
という返事が聞こえ、足音が近付いてきた。
ガチャ…
ドアが開き、若い男が
「佐藤さんですね?お待ちしていました。どうぞ」
と言って、かほを迎え入れた。
「あのぅ…女性の方とお聞きしていたんですけど…」
かほが不安げに尋ね、中に入るのを躊躇っていると
その若い社員は笑顔で答えた。
「えぇ、そうですよ。中の相談室にいますので、どうぞ」
――もう引き返せない……!
恐る恐るかほは事務所に入って行った。