初めて味わう敗北感に
かほは打ちのめされていた。
今まで自分から別れを切り出すか、自然消滅で
過去に大きな失恋を経験したことがなかった。
高校も、制服可愛さの為に親を説得し
私立のカトリックのお嬢様学校へ行った。
ランクを落として行った為成績はよかったので
希望の短大へも推薦ですんなり入った。
就職も学校に来ていた求人表を見て
試しに軽い気持ちで受けたら、すぐに決まった。
親に大反対されたものの、ようやく許しを受け
五年付き合った元夫と結婚し、男の子と女の子をもうけた。
人生で敗北感を感じたり
大きな挫折感を味わったりしたことなど殆どなく
苦労を知らずに40年近く生きてきたと言っても過言ではない。
「かほちゃんは甘やかされて
苦労を知らないから…
だからある意味世間知らずのお嬢様だよね」
よしきはよくかほをそう表現した。
そんなかほが羨ましいとも言ったが
半分はそういう部分をひどく嫌っていた。
価値観が違う…
住んでる世界が違う…
僕は苦労をしてきた人の方が魅力的だと思うし、好きだな…
口癖のようにそう言った。