《あんな奴・・・・》


初めはそう思っていたかほだったが

次第に空白になっていく心に、戸惑いを隠せなかった。


一度でも、あんな刺激的な経験をしてしまうと

ただ仕事に行き、家事をするだけの毎日が、とてつもなく退屈で

生き甲斐を失くし、魂さえなくなった抜け殻のようだった。



仕事は思ってたようなことをさせてはもらえなかった。

入った時と話が食い違い

自分のやりたい事、目指すものとは

大きく掛け離れていた。


それでも生活の為には、我慢しなくてはならない。


そんな仕事の愚痴や不満も、いつもよしきが聞き

受け止め、励まし、時に叱ってくれることもあった。


今はそれをぶつける相手もいない…




かほの心はぽっかりと大きな穴が開き

何をしても埋めることができなかった。



かほは自分で気付かないほど

深く深く傷ついていたのだった。