出会ってまもない頃
かほが車でひたすら泣いていた時
握りしめた手に、シンプルなプラチナの指輪を発見した。
ドキッとして我に返り
「結婚してるの?」
と聞くと、よしきは否定した。
「左の薬指は心臓に繋がってるから
それで結婚指輪は左の薬指にはめるんだって。
だから、その指に指輪ははめないで…」
よしきはその場ですんなり指輪を外した。
それ以来、その指輪を見たことがなかった。
《あの時の指輪が結婚指輪だったんだ…》
かほは思い出していた。
「かほです」
堂々と名乗ると
「かほさん?!」
とまるで知っているかのような口ぶりであおいは言った。