Tears〜硝子細工の天使〜


茫然として言葉も出ないでいるかほによしきは続けた。


「信じて欲しいんだ。

絶対へんな関係になることはありえないから。

ただ行くところが彼女にはないんだ…

……かほちゃん、頼む!」


よしきが頭を下げた。





暫くの間、沈黙が流れた。


そして

「…わかった。信じる」

かほは仕方なくそう言った。

それしか言いようがなかった。



言葉に出来ない気持ちが涙となり

鳴咽と共に次から次へと溢れてきた。


更によしきは言う。


「かほちゃん…こんなこと言うの申し訳ないけど

鍵を返して欲しいんだ…」



「なんでっ?何で鍵まで返さなきゃいけないのっ?!」

泣きながらかほが叫ぶ。

とても信じられない言葉だった。

かほは完全に取り乱していた。


だが一歩も譲らない姿勢のよしきに

とうとう観念し、震える手でキーケースから鍵を外した。



「…かほちゃん、本当にごめん。
彼女が帰ったら必ずまたかほちゃんに返すから…」

申し訳なさそうによしきが言う。


その言葉すら上の空で

かほはただ

この悪夢に流されるまま

自分の意志さえわからなくなっていた。



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