Tears〜硝子細工の天使〜


祥子とは短大時代からの友達で

結婚はしているけれど、子供はいない。

寂しさ故か、結婚以来恋人に不自由したことがなかった。

いわば恋愛のプロとも言えるほど、色々な経験 をしていたので

かほはいつも何かあると祥子に相談をしたり、話を聞いてもらったり

いわば駆け込み寺のような存在だった。


頭もよく、人の感情の動きなど敏感で

祥子の助言に何度助けられたかわからない。



「…このまま帰るのはよくないよ。

ちゃんと話せばよしきくんも解ってくれるだろうし…

こうしてる間に行っちゃうかもよ?」



祥子に言われてかほはハッと我に返り

元来た道を慌てて戻った。



《どうして出てきちゃったんだろう…

まだ出てってないよね?

お願い!家にいて!》



ドキドキしながらかほはアクセルを強く踏む。


《どうか、まだ家にいますように…》



頬を涙を濡らし、祈る気持ちでハンドルを握りしめ

かほは夜道を急いだ。