かほの耳に入ってきたのは
「今から行ってやろうか?」
と言うよしきのとても優しい声だった。
《あんな優しい言い方…
最近私にはしないよね?》
かほはショックに打ちのめされた。
軽くめまいを覚え
玄関先にそのままヘナヘナとしゃがみ込んでしまいそうな自分を何とか保ち
勇気を出して、大きな声で思い切り叫んだ。
「やめて!行くのは止めて!
話しを聞いてあげるのは構わないけど、行かないで!」
最後は泣き声に変わっていた。
そしてよしきの家から飛び出し、車へと走った。
「待って!!」
と言うよしきの声を背後に聞いたような気がしたが
追って来る様子はない…
動転していたかほは車に乗るとすぐエンジンを掛け
一気に発進させた。
それから震える手で携帯を鞄から探り出し、祥子に電話をした。

