Tears〜硝子細工の天使〜


久しぶりに会えるというのに

かほの気持ちはどんよりと沈んでいた。


複雑な思いを抱き、俯き加減に玄関をノックする。



中から

「開いてるよ〜」

とよしきの声がした。


かほは一つ深呼吸して玄関を開けた。


かほの不安をよそに、よしきは

「俺の勝ちぃ〜」

などとおどけて、笑いながらピースをしている。


「もぉ〜絶対先に着いて、脅かすつもりだったのにぃ〜」


微妙な顔の表情が顕れないように

わざと膨れっ面をして、かほは拗ねてみせた。



「てか、早過ぎるくない?」


「かほちゃーん、俺の車と運転技術を甘くみちゃあダメだよ。

1時間半もあれば余裕だって!」


「………」


かほは引き攣った作り笑いをした。



せっかく共に過ごす時間を、つまらなくしたくなかったのと

よしきに会えた嬉しさもあり

かほはもう何も問い詰めず、何も考えないことにした。



《まっいーか!》



そして、また変わらない日々が始まって行った。





が・・・



この後、かほは

またよしきのおかしな行動に気付いてしまうのだった。