Tears〜硝子細工の天使〜


この踏み切りを渡れば、よしきのアパートはもうすぐそこだ。


帰ってきたら、“おかえりっ”

って抱き付いちゃおう!


そのシチュエーションを想像しながら、自然と顔がほころぶ。





その時、かほの携帯からメール音が鳴った。


ちょうど踏み切りで引っ掛かり、止まっていたところだった。

かほはすぐさま鞄から携帯を出し、開いた。



その瞬間、目を疑った。



『ただいま!
今着いたから、もういつ来てくれても構わないからね』



えっ?

……早い…早過ぎる・・・・・



なんで……?



あの場所から1時間半なんて

いくらよしきの車がスポーツカーでスピードが出るとはいえ絶対に無理だ…



しかも、そこからの道のりに高速道路は設けられていないはず…


ホントはどこに行ってたんだろう?



かほには全く見当がつかなかった。



おかしいよ?


こんなの…おかし過ぎる・・・



全身から力が抜けるような感覚がして、妙な胸騒ぎを覚えた。