「つーか下心見え見えじゃん。あわよくばとか思ってるって絶対」
愛加は机に頬杖をつき呆れた顔をして言う。
「普通に優しんだよ吉岡くんは。みんな知らないだけ」
私はビューラーでまつげをあげながら答える。
これから吉岡昇太と会うと思うと、心なしかメイクに気合いが入ってしまう。
まぁ、30分くらい前まで同じ教室にいたけど。
「じゃぁこの奴の足跡付きのノートをどう説明してくれる!?」
実物の数学のノートを見せながら愛加は言った。
「愛加のこと嫌いなんじゃない?」
「喋った事もない奴に嫌われる筋合いなんかない」
「冗談だよ。気付かなかっただけでしょ?
とにかく!!彼に下心があったとしても私は協力してもらうつもり。もう雄二にはうんざりなの。いい機会じゃん」
雄二には振り回されてばっかりだった。
もういい加減にアイツから解放されたい。
「ごめんごめん、ちょっとからかっただけだよ。
まぁ悪くないと思うよ、あいつと付き合うのも」
愛加がニヤリと笑う。
「愛加、絶対おもしろがってるでしょ」
机の上に開いた化粧品をポーチにしまいながら、訝るように言う。
「違う。おもしろいの!」
愛加はお腹を抱えて笑い出した。
「あっそ。じゃぁこれから吉岡くんと約束してるから、じゃぁね!」
私は少し乱暴にポーチをかばんにしまい、席を立って教室を出た。
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