違った?、と進の方を向けば、これまたなんともいえない表情だった。




「そーだな…昔はちょっと嫌だったけど、最近の兄貴は…。」
「なんか変わった?」
「いや…アレで結構可愛いところあるんだぜ?」


可愛いところ…全然思いつかない。なぜなら、全く可愛くないからだ。



「そんなとこあるの?」
「…例えば、恋愛に奥手なところとかな。」
「………へー。」








それは驚いた。
というか、そんなこと弟に知られてるなんて、そのことがなかなか不憫な話。


「涼なんて、頭も顔も(たぶん)良いんだから、ちょっと強引にいけばたいていの女の人は落ちるんじゃないのかな。」
「………お前さ、それ兄貴に言ってもいい?」
「うん?いいけど。」



私の恋愛観がろくなもんじゃないことは、桐の御墨付きだ。










「あ、ケータイ鳴ってる。」
「え?」



進が指した先で、私の携帯が光っていた。

ディスプレイには"都堂奈津希"の名前が表示されている。


さっき会ったばっかじゃん。





「もしもしー。」
『なあ、救急箱どこだっけ?』