「あれ?電話来てる。」






部屋に戻り、放置してあった携帯を開けば、二件の着信。

桐と涼だった。





迷わず桐にかけ直す。
いやだって怖いんだもん。








かけ直しの着信音の間に窓の外を見ると、密さんの家が見えた。

なるほど、私の部屋が妖怪屋敷の裏なのか。

二階建ての我が家からは、平屋が全部見下ろせる。
密さんが玄関の辺りに蹲っているのが見えた。




笑みが漏れる。
ざまあみろあの変態め。
120%の力で踏んづけてやった。

足の甲が割れてればいいのに。








『……優季?』
「あ、桐、」


この上なく不機嫌そうな桐の声が携帯から聞こえて、とりあえず姿勢を良くした。






『あたしからの電話を無視するなんて、良い度胸してるね。』
「…ごめんなさい桐サマ。」



電話なのに泣きそうだ。
いや怖いんだよ!



『まーいいけど。ホントは家来ないかって話だったんだけど…もういいや。四時間前の話だし。』
「いやなんか本当すいません…。」
『蓮実とか鈴が会いたいって言ってたんだけどね。』