「あはは、ごめんってばー………優ちゃん?」


「っ、だから、開けるな!着替えてんの!」




無理矢理押したドアは、開けようとした密さんの額に思い切り当たったらしく、悶えている声が聞こえて少しスッキリした。





…女の子の部屋に入る時はノックぐらいしろ、なんて。


自分にそんな言葉、初めて使ったかもしれない。












「…で、なんの用なんですか?」


ニヤニヤしながら私を見る変態が憎らしくて、頬を抓りながら聞くことにした。


「いはいいはい!おへう!」
「…………。」
「ふひはへん、」
「…よし。」
「優ちゃんの鬼ー…。」
「で、私に何か?」



頬を押さえながらも、密さんはいつものようにへらーっと笑った。




「引越しをねー、手伝ってもらおうと思って。」

「…引越し?」














「…これだけですか?」

「うん、これだけ。」




結局私は段ボールをいくつか運んだだけ。大きな家具はすでに運びこまれていた。