進が長いため息をついて、自分の席に座った。
同時に担任の先生が入って来て、ホームルーム開始の号令がかかる。
ホームルームが終わり、みんなが一限の準備を始める。
英語の教科書を出そうとすると、優季、と隣から声が掛かった。言わずもがな、進だ。
「?なに、進。」
「お前さー…なんつーか…涼が帰って来たら、おかえりぐらい言ってやってな。」
「……?うん、いつも言ってるけど。真っ先に陽希に会いに来るし。」
「あー、うん、陽希さんに…ね、うん…ならいいんだ。」
ブツブツ言い続ける進はなんか気持ち悪かったが、思春期の男の子はこんな感じなんだろうと納得し、英語の教科書を引っ張り出した。
「ただいまー…。」
今日は学校から真っ直ぐに帰ってきた。
まあ、もちろん誰もいないんだけど。
自分の部屋に上がって制服を脱ぎ、部屋着を出す。
兄三人が一つの部屋に押し込められていることを考えると、自分はなかなか得をしている。
ひとりほくそ笑んでいると、階段を上がって来るバタバタという音が響いて来た。
