「イケメンなら探さなくてもここにいるじゃねぇか、優季。」
「え、どこ?」
「てめぇ、峰岸!」



もうすぐホームルームが始まるというギリギリの時間にやって来たのは、隣の席で幼馴染みの有森進(ありもり しん)だった。

そのまま取っ組合いのケンカに発展していく二人を若干引いた目で見ていると、桐が口を開いた。





「その河島って人さ、奈津さんと同い年なら、涼先輩とも同い年なんじゃない?」
「んーん、涼は陽希と同い年だもん。」



それが聞こえたのか聞こえなかったのか、進がこちらを向いた。



「あ、そうだ。涼、そろそろこっちに帰って来るぜ。昨日電話来てさ。」

「へー…。」




有森涼。進の兄だ。
厳密には私の幼馴染みは進というよりは彼かもしれない。
だって、陽希といつも一緒で、ずっと一緒に遊んでくれた。


陽希とは違って優秀だった彼は、どこか遠くの大学の医学部に行ってしまったけれど。




「でも去年も会ったし。なんだかんだ帰って来てるよね。」



私がそう呟くと、目敏く聞き付けた進がなんともいえない目でこちらを見ている。





「なんだよ、その憐憫の目は…。」