千恵子さんは更にお酒を僕に勧めた。僕は手を差し出した。千恵子さんは上手くつげずに僕の手の甲を少しぬらした。「ちょっと、酔ったみたい」と千恵子さんは言った。僕は後ろに並んだ布団を見た。「少し横になって良い?」と千恵子さんは言った。僕は何も言わなかった。部屋からは日本庭園が見えた。月あかりが苔むした岩を照らし、今にもししおどしのカーンという音が聞こえてきそうだった。でも、いくら待っても聞こえなかった。
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