「美和ねえのおにぎりがやっぱり美味しい。これがあるから頑張れるんだよね」


美和子さんはそんな柚の言葉を、隣で嬉しそうにニコニコしながら聞いている。


柚は幸せもんだなって思った。


柚はひとりで踏ん張ってるようにみえてたけど、実はこうして支えてくれている人がいたんだ。

俺にはないものを柚は持っていて、俺はちょっぴり嫉妬した。


俺も、こうして支えてくれる人がいたら、野球を嫌いにならなかったのかもしれない。



いや、支えてくれようとしたのに・・・俺がつっぱねたんだ。


中学の時に閉じこめていた思いが胸の底からぐっとあふれ出しそうになって、苦しかった。


「ねえ、木波君。せっかくだからこのおにぎり貰って」


美和子さんは俺の手におにぎりを持たせてくれた。


「また、お腹空いたときにでも食べて」


美和子さんはそう言っておにぎりに両手を添えると、少しだけ力を入れてきゅっと俺の手を優しく包んでくれた。


あったかくて安心できる・・・そんな心地よさを感じた。