柚はそういうと体をめいっぱいグンと伸ばし、立ち上がった。


「汐崎、お前黒須先生と仲いいんだな」


「・・・・・・あ、んー。どうしよっかな」


「何が?」


「いいや、どうせもうちょっとで分かっちゃうし。あのね、黒須先生は、私のお兄さんなんだよ」


「は!?え?どういうこと?苗字違うじゃん」


ここまで言って俺は口をつぐんだ。

触れちゃいけないようなことだったらどうしようかと、焦ったからだ。


「ああ・・・っと正しくは義理のお義兄さん。お姉ちゃんの旦那さんなんだよね」


「っへ!?」


「先生って目でいまいち見られなくてさ。照れくさくて学校じゃあまり話せないんだよねえ」


「・・・全然気づかなかった」


「あたり前だよ。誰にも話してなかったし。みんなには内緒にしといて」


「うん」


「さあ、木波。はじめようか!」


柚が俺の方へ野球ボールをフワリと投げた。