「黒須先生?なんで?」



「朝練してるのたまたま目撃されちゃってさ。それ以来30分くらい練習付き合ってくれてるの」


「へえ、そうなんだ・・・・・・」


柚を試合に出さなかった黒須先生。


黒須先生はてっきり柚のことは女として、別で見ているのかと思っていた。

けど、そうじゃないのかもしれない。

一番柚のことを気にかけてくれているのは、黒須先生なのかもな。


「黒須先生っていい先生なんだな」


「うん、私もそう思うよ。いつも朝練来てくれて、その後仕事して、部活して家帰って。そんでまた朝早く来てくれてさ。あ、木波そろそろ交代して」


俺は柚の背中をさっきの仕返しのつもりで強く押してみた。

柚の体がぺったり地面につく。

仕返しは全く仕返しになってなかった。


「そうなんだ。俺はそんな黒須先生の姿は見たこと無いけど・・・でも、黒須先生が必死で野球部を強くしたがってるのはなんとなく分かる」


柚が地面にくっつきそうになっている頭を少し傾ける。


「なんとなくじゃなくてそうなんだよ。先生は私と一緒で甲子園優勝を本気で目指してるんだから」