「汐崎って昨日説明会にいた汐崎柚のこと?」


「そうそう!衝撃だったわ。あの子隣町のボーイズチームに一人だけいた女の子だろ?

一度しか練習試合したことなかったけど、すごい覚えててさ。

女子ってところも忘れられないポイントだったけど、それだけじゃなくて汐崎さんはめっちゃ上手かったんだよ。

だから覚えてる。そんな子とプレー出来るって思っただけでワクワクするわあ!」


「うそ…俺らがボロ負けしたチームだろ?女なんていなかったじゃないか」


「いたよ。ショート守ってた子。背もあの時から大きかったしな。あの頃から、スレンダーだったし。間違えても仕方ないのかも」


修平はそう言いながら笑顔で階段を駆け下りていった。




俺は動けずにしばらくその場に固まっていた。





思い出していた。





今でも鮮明に思いだせる、あの日の試合のことを。




俺が自信満々にプレーしていた中学時代。


俺が完璧にとらえた、ヒットコース確実のライナーを、ダイビングキャッチして捕ったあいつ。



すごいやつがいるんだって、衝撃だったんだ。



俺をそんな気持ちにさせる、プレーをするあいつ。







―――それが汐崎柚……。




口の端が自然とあがった。


俺は修平のように無邪気に階段を駆け下りた。