顧問は黒須智(くろすさとし)という、まだ若い先生だった。


短髪で筋肉質な黒須先生は、まだ肌寒い季節だというのに、職員室の中でTシャツだった。


「これで3人か。まだ足りないな…木波君、他に入部できそうな人いないかな?」


黒須先生は提出したばかりの俺の入部届を見ながら、回転椅子の向きを机から俺へと変えた。


「俺が知ってるのは楢崎(ならざき)修平くらいで……」


「楢崎君か…君のちょっと前に来たな。一緒に野球してたのかい?出身中学同じみたいだけど」


そういうと黒須先生は、俺のつま先から顔までをまじまじと見つめた。


「ま、まぁそうですね。小学校からずっと……」


「じゃあ経験者なんだ?」


黒須先生は嬉しそうに微笑んだ。


体つきには似合わない優しい笑顔で、俺は少しほっとした。


しかしその笑顔に申し訳なさも感じた。
 



だって…きっと、黒須先生は野球部を強くしたいと考えている。



経験者だと聞いたときの、嬉しそうな微笑み。



浮ついた気持ちで入部した自分に、少し罪悪感を感じた。
だって・・・きっと、黒須先生は野球部を強くしたいと考えている。



経験者だと聞いたときの、嬉しそうな微笑み。



浮ついた気持ちで入部した自分に、少し罪悪感を感じた。