「その理由とは・・・噂通り、高校野球の夏の大会が原因・・・ですか?」


「はい。そうですね。今回はそちらを選んだということになります」


「なぜですか?あなたは出場することが出来ないのですよ?」


「・・・・・・私もそう思っていました」


柚は静かに微笑みながらゆっくりと答えていく。


「私、見たいと思ったんです。このチームで誰よりも一緒に練習してきた人がいて・・・その人の姿を」


柚の言葉にドキっとする。


「それにその人だけじゃなく、私が試合に出場するということを望んで、署名を集めてくれた部員もいて・・・信じて書いてくれた部員もいて。このチームは、私を女というくくりなく、一人の選手として見てくれたんです。最後の夏。私のために一生懸命になってくれた人達を、私も一生懸命応援しようと思ったんです。たとえ試合に出場できなくても。」