「なんだろうな。三先ともう一度野球がしたいってのが体に染みついてたのかな?確かに悔しかったけど、私はやるしかないし。その後ガラにもなく泣いちゃったけどね」


柚が恥ずかしそうに笑う。


「・・・・・・だけど今は」


柚が呟いたとき、カゴの中でボールを捕ろうとした二人の手が重なった。


「あ、ごめん!」


俺が慌てて手をよける。


「・・・・・・うん」


柚は何事もなかったかのようにボールを拭き続けた。


「私、尚哉には自信もって投げて欲しい。もし・・・もしこのまま三先との本気の勝負が叶わなかったら、その時は尚哉が三先と勝負して」


「・・・・・・俺が三先に勝ってもいいの?」


柚は静かに笑った後、優しく頷いた。


「いいよ、尚哉なら」