「黒須先生は、柚が甲子園で優勝したがっている理由を知ってるんですか?」


「まあな・・・これでも義理の兄だし。美和子と一緒に話し聞いてやってるから」


黒須先生が優しく微笑んだ。


「だから、あの時は俺も悔しかったな」


「三先が、手加減した時・・・・・・」


黒須先生は俺の言葉を聴き、コクンと頷いた。


「だから、あからさまにお前の気持ちがピッチングに出たとき、俺はちょっぴり嬉しかった。だけどな・・・ピッチャーとしてはダメだ」


「すいません」


「お前に必要なのは、固い決意だと思う。ぶれちゃダメだ。何があっても」


「はい・・・・・・」


落ち込む俺を見て、黒須先生が微笑む。


「まあ、お前は優しすぎるんだよ」

黒須先生は俺の肩にポンと手を置くと立ち上がった。