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県立東実(とみ)高等学校。


文武ともに中の上くらいの成績で、トップクラスの高校を目指せない人が入学する。


なんとなく半端な高校だ。



俺、木波尚哉(きなみなおや)は今日からこの高校の生徒になった。


新しい生活のはずなのに、なんだか憂鬱な気分だ。



昨日綾と別れたから……?



でも、さほどショックではない。





だけど今は、ぼんやりと過ごしすぎた自分に後悔していた。


俺は修平(しゅうへい)に促されて、入る予定のない野球部の部活説明会に来ていた。


「いっしょにいくべ!」


と、グイグイ腕を引っ張る修平。


どこへ行くのかなんて確認しないまま、俺は野球部の説明会場である、3年2組の教室に入ってしまっていた。



時間ぎりぎりだったからだろう。

俺らが入るなり教室の前後の扉は閉められ、出るに出られない状況になってしまった。



ありえねぇ。




もう野球はやめようと思っていたのに……。






―――そう思っていたはずだった。




なのに次の日…俺は、野球部に入部届を提出していた。




それはあいつに興味を抱いたからだった。