「柚、大丈夫か!?」


俺は急いで柚の元へ駆け寄って、柚の隣にしゃがみ込んだ。


「あー・・・うん。なんとか。とりあえず試合は乗り切れて良かった」


柚は埋めていた顔を小さく上げると力なく微笑んだ。


「ごめんな。俺がピッチング崩れたせいで・・・調子悪いお前のとこに打球飛ばせちまって」


「そんなこと・・・私も三先が手加減したボール打ち切れなくて、何球も見逃しちゃったし・・・木波のこと助けられなかった」


「やっぱり分かってたんだ。三先が手加減して投げたって」


「ヘヘッ・・・・・・」


柚は俺の言葉を聴いて苦笑いを浮かべた。




その瞬間だった。



柚の目からポロリと大きい涙が落ちたのは。


柚は慌てて顔を腕の中に埋めた。



小さく震える柚の背中。


試合で見せた姿は、柚が見せた強がり。


俺は何も声をかけてあげられなくて、そっと柚の背中に自分の手をおいた。