【完】青春PLAYBALL!!

一回表。


俺たちは守備からだった。


久しぶりの実践で、俺は少し緊張していた。

少しだけ手が震える。

コントロールも鈍り、野田先輩が構えたところに上手く投げることができない。


最後の一球が野田先輩のグローブから、セカンドにいる修平の元へ届けられる。


「ナイスボール!」


修平のグローブがこすれたところから、静かに砂煙が舞う。

修平がボールを持って俺の元へ駆け寄る。


「尚哉、緊張してるのか?」


「うん。そうみたい・・・・・・」


自信なさげに答える俺のグローブに修平がボールを渡す。


「尚哉!」


その時、ショートの方から柚の声が聞こえた。



尚哉って・・・柚は俺のことを名前で呼んだ。


たったそれっぽちのことなのに。


遠くから柚の力強い微笑みを見ただけなのに。



俺の右手に自信が戻ってくる。