「それより、今日はいつもよりも遅かったんだな」


俺は、笑いが収まり呼吸を整えている柚に尋ねた。


「あ、うん。疲れてたからかな?ちょっと寝坊しちゃってさ」


「無理しなくても良かったのに」


「無理してでも。今日は木波とキャッチボールがしたかったの」


柚がグンと背伸びをしながらもう一言付け加える。


「帰ってきて、木波とキャッチボールするとホッとするんだ」


柚の言葉にドキっとした。

単純に嬉しかった。

そんなこと言われたら、ずっと側にいて欲しいって思ってしまう。



チリン



その時、柚から聞き慣れない音が聞こえた。

柚のスポーツバックには、いつもはついていない、野球ボールの形をした鈴がついていた。