走った疲れからなのか・・・・・・。


俺はしゃがみ込んだままその場から動けなかった。


一度緩んだ涙腺は、しまりようもなかった。


走ってる間に乾いちまったと思ったのにな。


「尚哉?」


その時、背中の方から綾の声がした。


涙を袖でこすって拭い、後ろを振り向く。

外灯にぼんやり照らされた綾の姿がそこにはあった。


「泣いてるの?」


綾は俺に近づき、そっと背中に触れた。

その優しさがとても悲しくて・・・・・・。

俺は綾に、今の自分の本当の気持ちを話していた。


「綾・・・俺、柚が好きなんだ。気づいたんだ」


外灯の光が綾の後ろから射して、綾の顔は見えなかった。

だけど、俺の背中に置いていた綾の手が、一瞬ピクっと動いたのは分かった。


「泣いちゃうくらい好き・・・なんだね」


俺はためらいながらも、小さく頷いた。