嫌でも気づかされてしまった事実。




俺は、柚が好きだ。




「俺は、柚が好き」


口に出して言ってみる。

みるみるうちに現実に変わってしまうような気がした。



財布も携帯も持っていなかった俺は、走って家まで帰った。

その時間が、余計に俺の思考を働かせた。


そして、家に着く頃には俺が口に出した言葉は本当のことで、変えられない事実だと実感した。


俺の家の玄関には、俺の荷物が置かれていた。

俺は、置いてあったスポーツバッグの中を確かめた。


財布、携帯・・・・・・。


携帯を開くと修平からメールが入っていた。

二件。

古い送信履歴の方から開く。


『不用心だとは思ったけど、鍵しまってたから荷物玄関においといた。帰ってきたら連絡しろよ!』


次に新しい方を開く。


『って、携帯まで持たなかったのかよ!バカー!』


「フ・・・修平らしいや」


メールを見た途端笑いが込み上げたけど、一緒に涙もぽろっと落ちた。