必死に駆けた。


早く柚に会いたい。


こんなに誰かを思って、必死になって。

今までこんなことなかった。



この強い感情はなんだ・・・・・・?



東実の校舎が見えて、グラウンドが見えて、柚が座るベンチが見えて。



だけど、駆けて駆けて近づいても、柚の姿を見つけることができなかった。



ベンチまで着くと、柚の代わりにいたのは自転車だった。


自転車の脇にはスポーツバックが置かれていた。



目に入った汗をパーカーの袖で拭って、スポーツバックをまじまじと見た。


えんじ色のラインが入ったバッグ。




嫌な予感がした。



えんじ色は土根のチームカラーだ。


何かに吸い込まれるように、俺の目は部室に向いた。


「はは・・・そうだよな。俺じゃない。俺じゃないんだ・・・・・・」


俺はそう呟くと、そっとその場を離れた。




胸から何かが込み上げて・・・それは信じたくない形で俺の目からあふれ出す。








俺が見たのは、柚と三先がキスをしているところだった。