「何かあったのか?」


俺たちの様子がおかしいことに気づいたのだろう。

修平がこちらに向かって走ってきた。


「別に・・・なんでもない。帰ろう、修平。バス来ちゃうぞ」


俺はバス停に向かってスタスタと歩いた。


「お、おう」


修平は戸惑ったように俺とハルを交互に見ると、俺の後ろを追うように歩いた。



早足の足と同じように、俺の脳みそもグルグルと高速で回っていた。


"いつも見てるじゃないですか"



と言ったハルの言葉と、柚に抱いた様々な感情が頭の中を埋め尽くす。



三先と柚が話しているのを見て嫉妬したこと。


柚がいなくなるかもしれないって思って寂しくなったこと。



・・・・・・んなわけねえじゃん。


ただ単に、俺が知らなかった柚を見て、そう思っただけだろ。



俺はドカッとバスの一番後ろの座席に座り、ふて寝をした。



新生東実野球部、波瀾の幕開けだった。