表彰式を終え、柚と二人で会場を後にしようと、センター席へと続く階段を降りる。


あたりはまだ、試合の興奮が残り落ち着かない様子だ。


階段を降りると丁度三先の姿が見えた。

三先はたくさんの報道陣に囲まれていた。


夏の日差しに混ざった、フラッシュのチカチカした光が、三先を包んでいた。



柚の足が止まる。



「三先君、試合お疲れ様でした。最後!ピンチの時に投げたフォーク。球場が沸きましたね!あの時、三先君は何を考えてあの一球を投げたんですか?」


興奮した記者の声が俺たちの所までハッキリと届く。


「あの一球は・・・・・・」


三先は思い出したようにふと笑うと、話しを続けた。


「あの時スタンドに中学校の時、一緒に野球をしていたチームメートがいたんです。そいつのことを考えながら投げました。そいつの目が大丈夫だよって言っている気がして。心が落ち着いたんです」


三先は落ち着いた声で、言葉をひとつひとつ選びながら答える。


「大切な仲間だったんですね」


「はい。そいつがいなかったら、今僕は野球をしていなかったと思います。俺にとって一番大事な人です」



三先の心がまっすぐ・・・まっすぐ柚に届く。




柚は俺の隣で、三先をまっすぐに見つめていた。