「仕方がない。あれは俺たちの作戦を読んで、内角に投げた向こうの勝ちだ。当てただけでも、よくやったと思う」


黒須先生はベンチに戻ると、俺たちにそう声をかけた。




だけど・・・・・・。




そこからだ。

俺の中で何かが崩れてきた。

それはみんなも同じだったように思う。

ベンチは沈み、覇気が薄れている。


あんなに大きなチャンスを物に出来なかったんだ。


その気持ちはボールに表れる。

俺の放ったボールは、野田先輩が構えていたミットとは全く違う場所、ど真ん中高めに甘く入った。



しまった・・・・・・!



カキーン!



ボールは大きな、大きな放物線を描き、フェンスを越え、センター側の芝生へ入った。



太鼓の音が俺の心臓にガンガン響く。


俺は、帽子を脱いで、力なく天を仰いだ。






1年目の夏はこうして終わりを告げた―――。