その言葉を言ったのは綾だった。


綾がブルーナインから出たバスの中、ぼんやりと外を眺めながら呟いた。


もう一度・・・・・・?
だって今更・・・・・・。


いつものバス停で綾と一緒にバスを降りる。


「送ってくよ」


自然とその言葉が出た。


「うん」


静まりかえった住宅街には、俺と綾の足跡だけが響いた。


「尚哉、ごめんね。試合前の大事な時に余計なこと言って」


綾が沈黙をやぶるように俺の隣で呟いた。

今はこの優しさが胸を突く。


「ただ、これだけは分かって」


綾は足を止めた。


「私はまだ尚哉が好き。いつでもいいから返事くれるの待ってる」


綾は俺の前に回り込むと俺を見上げてもう一度言った。


「待ってるからね。じゃ、ここで」


綾はニコリと笑うと家の中へと入ろうとした。


「待って!綾!」


気づくと俺は綾の手首を引っ張って、綾を抱きしめていた。





もう一度・・・・・・