靴をだらしなく地面に擦って歩く音がする。

「また泣いてんのかよ」

 その足音が止まったと同時に、優しさの欠片もない冷たい声が頭上から降ってきた。

 その声の主は、輝の友人の和馬だった。

彼は何故か、私が泣いている時にばかり現れた。


 私は返事をせずに下を向く。

あまり、泣き顔は見られたくなかった。

 そんな私に腹を立てたのか、彼はブドウの入ったスーパーの袋を荒々しく私に突きつけた。

「……ブドウ持ってきたんだけど。あいつ好きだっただろ?」

 透明の袋から透けて見えるブドウが、輝のさっきの言葉を思い出させる。

「もう……ブドウいらないの」

「……輝がそう言ったのか?」

 肯定の意味で首を動かす。

 彼は一瞬目を見開いて、すぐに悲しい顔をした。

少しずつ訪れる変化に、親友の死を間近に感じたのだろう。