『終わり』までのカウントダウンと、小さな片想いは既に始まっていた。


 私は椅子に座り、ブドウの皮をひとつひとつ丁寧に剥いていく。

剥き終えたものを皿に置いた瞬間、それは輝の口に運ばれる。

一人で全て完食しそうな勢いだ。


 正直、指や爪の間に紫色の不快なものが付くのが嫌でブドウを剥くのは気が引けた。

しかし、ブドウが一番好きだと彼が笑って話すから、そんな不快感もいつの間にかなくなっていた。

 小さなことでもいいから役に立ちたい。

ただ、その一心だった。


 こんな風に思う度、私は恋をしているんだと思い知らされる。

それが嬉しいと感じることはなく、苦しかった。


 恋心に『片想い』という雲がかかっていた。

それが今日の空のように晴れることは、きっとない。