『治る病気』

そう言われた時、輝の心はどれだけ傷ついただろう。

「それから彼女とは本当に会わなくなった。……俺、改めて気づいたよ。人の気持ちなんて、何かをきっかけに容易く変わってしまうものなんだと」

 それでも輝はまだ、きっと彼女のことを忘れられないのだろう。


 人の心はなぜ、自ら複雑な迷路に入ろうとするのだろう。

出口など、どこにも存在しないと知って。

行き止まりを見つける度、胸は痛むと知って。


「輝のやりたいことって……」

 唾を飲み込み、言葉を詰まらせる。

「……彼女に会いたい」

 その言葉とほぼ同時に、微かにドアが動く音がした。

すぐにそこへ視線を向けると、しっかりと閉めたはずのドアが、少し開いていた。