この空を実際に見てもらいたいとは思えなかった。

輝がどこかへ行ってしまいそうで怖い。

病気のことも、周りの人のことも全て払い除けて、空を夢見て行ってしまうんじゃないかと。


 輝を少しでも長く、ここへ引き留めておきたい。

「なんかやりたいことはないか?」

その思いが、そんな言葉へと変わった。

 彼は首を捻り、考える素振りを見せる。

突拍子もない俺の問いかけに、真剣に答えようとしてくれることが、嬉しかった。

 しばらく考える時間が経過した末に、彼は遠慮がちに口を開いた。

「……ちょっと話したいんだけど、聞いてくれる?」

 小さく頷く。

「ただの男の独り言だと思って聞いてくれると嬉しい」

再び頷くと、ゆっくりと話し始めた。