ライトと呼ばれた男は気だるそうに言葉を返す。

「何か用かよ」

「なんだその態度は。何年も帰って来ないものだから心配して探してやったというのに」

「…その内帰ると言ったよ。シバ」

「50年はたった。馬鹿にするのも大概にしてほしいものだ」

シバと言う名の竜は呆れた声を発した。

「何がしたいのだお前は」

「別に。ただこの世界の終わりを見たいだけだ」

「…人間の姿になってまですることか?」

ライトは表情を曇らせた。
そう、ライトはシバと同じ――――竜であるのだ。

「こっちの方が色々できていいんだよ。…もう用は済んだだろ?早く帰ってくれよ。人間に見られたら大変だ」

ライトはそう言うと隣にある軽い荷物を持ち肩に掛け、その場から去ろうとした。

「…まあよい。ああ、後一つ言い忘れていた。竜王がたまには顔を見せろと。それだけだ」

「その内行くかもな」

「ふん。お前のその内は何年後か…」

シバはそう吐き捨て、また砂風を撒き散らし何処かへ飛んでいってしまった。
それを確認したライトは小さくため息をつき、また歩きだす。


――その表情は何故か寂しげな、悲しそうなものだった。