ハゲたオヤジという章也くんの言葉を思い出して私はまた小さく笑った。

笑えている自分が何とも不思議で、何となくこれから家に帰ってもママや吉田さんと普通に話せそうな気がした。

十年後か。

十年もしたら今の心の痛みも忘れているかもしれない。

そして、そんな私の隣には章也くんがいたりして?

私は十年後の自分に思いを馳せながら、ママと吉田さんが待つ『家』に向かって歩き出した。                    《おわり》