私には章也くんの後ろ姿が私のそれと重なって見えた。

その背中を見ているだけで胸が痛い。

 私は自分の左胸にそっと手を添えた。

 どくんどくん、と私の生命を告げる音は、わずかだけどいつもより早いように感じられる。

『好きなんだ』

 顔を真っ赤に染めて私に告げた章也くんの顔が一瞬だけ私の脳裏に浮かんで……消えた。

校舎と屋上を繋ぐ重い鉄の扉が音を立てて閉まり、私の視界から章也くんの存在が消えても私は動く事が出来なかった。

「ごめんね」

 誰もいない屋上で私の小さな声が風に運ばれて遠くに飛んだ。