「すごいね」

 私は本当に感心していた。嫌味でなどでなく、心底感心したと言っていい。

章也くんの態度は告白前と大して変わらなかったし、好かれているとは全く感じる事ができなかったからだ。しかし、私の言葉を章也くんは素直に受け取ることは出来なかったらしい。

「すごいって何が?」

 そう切り返してきた時の章也くんの表情はちょっとムッとしているみたいだった。

「どうやったら好きな人に対して普通の態度でいられるの?」

「どうやったらって言われても……」

「私には自信ない。好きな人と毎日顔をあわせて、何とも思っていないように接する事なんて出来ないと思う」

 章也くんがびっくりしたように一重の目を大きく見開いた。まなじりがきゅと上がる。

「麻生、それって……お前、何のこと言ってんの?」

「……ねえ、岩田くん教えてよ……どうしたら普通でいられるの?」

 会話が成り立っていない。私はまるで熱に浮かされたように章也くんに詰め寄った。

「麻生、落ち着け!落ち着けってば」

 章也くんはふらつく私をブランコに座らせながら私の顔を覗き込んだ。

「何があった?言ってみろよ。聞いてやるからさ」