「今日、一緒に帰らない?」

 私が章也くんにそう声をかけたのは掃除の最中だった。

 同じ班の仲間たちが懸命に机を動かしているなか、ゴミ出しのために教室を出よう

としていた章也くんに声をかけたのだ。

 驚いたような章也くんの表情に私は畳み掛けるようにもう一度言葉を重ねた。

「一緒に帰りたいんだけど、何か用がある?それなら別にいいけど」

 言いながら章也くんはなんて答えるだろうと考えている。

 もし私に対して気持ちが残っているとしたら、なんて答えるだろう?逆にもう何とも思っていないとしたら?

 どちらにせよ、私には想像がつかなかった。

 章也くんは失恋した私から誘われてどんな態度をとるのだろう?

 声をかけたのはそれを知りたかったからというわけじゃなかったけれど、どんな表情をするのか見てみたい気がした。

「用はないよ。けど……」

 何で急に一緒に帰ろうなんて言うんだ?

 章也くんの視線が訝しげに私を見ていた。

その言葉を口にする前に私は「じゃあ、一緒に帰ろう。待っているから」とだけ言って話を打ち切った。

 背中に章也くんの視線を感じる。きっと私が何を考えているのか分からないのだろう。