呆然となってつぶやいた言葉にママの視線が私の顔に向けられる。

その瞬間、ママの幸せそうな表情に暗いかげりが浮かんだ。

「遥日ちゃん、ママがあっ君と結婚するの反対?」

「……何で?」

「だって遥日ちゃん、泣いているじゃない」
「え……」

 ママに言われて頬に手を当てると生暖かい雫が頬を流れて私の指を濡らした。

 私、泣いている。

 その事実がショックだった。

私を支えていた最後の砦のようなものが崩れていく、そんな感覚に襲われた。

 本当のことを言えば、いつかこんな日がくることは覚悟していた。

 ママも吉田さんも私なんかよりずっと大人で、大人の付き合いが続けば「結婚」を意識するのが当然だ。

だから、いつこんな日が来てもいいように心の準備はしていたつもりだ。

 にっこり笑って「おめでとう。ママが幸せになってくれるなら私、嬉しい」そう言うつもりだったのに、言葉のかわりに涙が出た。

 どうしよう。どうやって誤魔化そう。

 パニックになる私の内心を余所にママが口を開いた。

「遥日ちゃん、ごめんね。まだ再婚の話は早かったかしらね」

 溜め息をついて、目を伏せたママの姿に私の胸が痛んだ。